1. 福祉のはじまり ― 「困っている人」を助ける心
福祉の原点は、人が人を思いやる「おたがいさま精神」にあります。
日本では江戸時代の寺子屋や施薬院などが、その先駆けでした。
当時の支援は、制度ではなく地域共同体のつながりによって行われ、貧困者・病人・孤児などが地域で支えられていました。そこにあったのは「助け合い=義務」ではなく、人間らしさの尊重でした。
2. 制度化される福祉 ― 国家と地域の役割
明治期に入り、近代国家としての仕組みが整う中で、「恤救規則」や「救護法」などが生まれました。これらは貧困に陥った人々への制度的支援の始まりでした。
戦後の日本国憲法第25条(生存権)を受け、生活保護法が成立。ここで「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利が法的に保障されました。
同時に、地域福祉という考え方も広がり、支援が一部の専門家に任されるのではなく、地域全体で暮らしを支える視点が重視されるようになったのです。
3. 現代の福祉 ― 支援が届く仕組みづくりへ
現代社会において福祉は「特別な人のための制度」ではなく、誰もが関わる“日常”の仕組みです。
高齢化、貧困、障害、ヤングケアラー…さまざまな課題に対応するため、包括的な支援体制や多職種連携が求められています。
その中で大切なのは、支援される側を「弱者」ではなく「主体的な存在」として尊重する視点です。福祉はただ守るのではなく、ともに生きる手段なのです。
4. おわりに ― 福祉は「わたし」のためでもある
福祉とは「あなたのため」だけではありません。「わたし」の安心を支える基盤でもあります。
歴史を振り返れば、福祉は「誰かの善意」ではなく、社会がつくる仕組みであることがわかります。今を生きる私たちは、その仕組みの担い手として、支える側にも支えられる側にもなれるという認識を大切にすべきです。
“福祉って、誰のため?”の答えは――みんなのため。
🔜次回予告
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📚参考文献・実例・動画
- 厚生労働省『福祉の歴史と制度』(2020)
- 日本社会福祉士会『社会福祉の基本と実践』
- 中村智彦『地域福祉の現場から』(2021)
- YouTube:福祉ってなに?NHK for School
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