🌟 社会福祉調査における倫理と個人情報保護 🌟
信頼と尊重を基盤とした調査研究の実践
📋 目次
- 社会福祉調査における倫理の重要性
- インフォームド・コンセントの実践
- 個人情報保護の具体的方法
- 研究倫理審査委員会の役割
- 実例から学ぶ倫理的配慮
1. 社会福祉調査における倫理の重要性
社会福祉分野の調査研究は、支援を必要とする人々や脆弱な立場にある方々を対象とすることが多いため、特に高度な倫理的配慮が求められます。研究倫理とは、調査対象者の人権、尊厳、プライバシーを保護し、研究によって不利益や危害が生じないよう配慮する原則です。
日本社会福祉学会の研究倫理指針では、自律尊重、無危害、善行、正義の4原則が明確に示されています。これらの原則に基づき、調査者は対象者との信頼関係を構築し、誠実に研究を進める責任があります。
2. インフォームド・コンセントの実践
インフォームド・コンセントは、調査対象者が十分な情報を得た上で、自由意思によって参加に同意するプロセスです。説明すべき内容には、研究の目的、方法、予想される利益とリスク、個人情報の取り扱い、参加の任意性、いつでも撤回できる権利などが含まれます。
特に高齢者や障害者、児童を対象とする場合は、理解しやすい言葉で説明し、必要に応じて代諾者から同意を得るなど、対象者の特性に応じた配慮が不可欠です。文書による同意取得が原則ですが、状況に応じて口頭での同意も検討されます。
3. 個人情報保護の具体的方法
個人情報保護法や個人情報の保護に関する法律に基づき、調査データの管理には厳格な対策が必要です。具体的には、匿名化処理、データの暗号化、アクセス制限などの技術的措置を講じます。
収集したデータは連結可能匿名化または連結不可能匿名化を行い、個人が特定されないよう処理します。また、データ保管場所の施錠管理、利用後の適切な廃棄、研究終了後の保存期間の設定など、データライフサイクル全体での管理体制を確立することが求められます。
4. 研究倫理審査委員会の役割
研究倫理審査委員会(IRB: Institutional Review Board)は、研究計画が倫理的に適切かを審査する第三者機関です。多くの大学や研究機関では、研究開始前に倫理審査の承認を得ることが義務付けられています。
審査では、研究の科学的妥当性、リスク・ベネフィット比、同意取得プロセス、個人情報保護対策などが評価されます。審査を通じて、研究者自身が気づかなかった倫理的問題を発見し、改善することができます。
5. 実例から学ぶ倫理的配慮
📌 実例1: 高齢者施設でのQOL調査
認知症高齢者を対象とした調査では、本人の同意能力を慎重に評価し、家族からの代諾を得るとともに、本人の意向を最大限尊重する「アセント」の取得を行いました。調査は短時間で、負担の少ない方法を選択し、表情や態度から不快感が見られた場合は即座に中止する配慮がなされました。
📌 実例2: DV被害者支援の実態調査
極めてセンシティブ情報を扱うため、調査場所の安全確保、二次被害の防止、心理的サポート体制の整備が重視されました。データは完全匿名化し、支援機関を通じた間接的な協力依頼により、対象者の安全を最優先とした調査設計が実施されました。
📖 参考文献・論文
- 日本社会福祉学会(2020)「研究倫理指針」日本社会福祉学会
- 岩田正美・小林良二編(2018)『社会福祉調査の基礎』有斐閣
- 田中耕太郎(2019)「社会福祉研究における倫理的配慮の実際」『社会福祉学』第60巻第2号、pp.85-98
- 厚生労働省(2021)「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」
- 山田美代子(2020)「質的調査におけるインフォームド・コンセントの課題」『社会福祉研究』第138号、pp.72-82
- 平山尚・武川正吾編(2017)『社会福祉研究法』有斐閣アルマ


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