障害者福祉の歴史と法制度
共生社会実現への情熱的な歩み
📚 目次
🏛️ 障害者福祉の歴史的変遷
日本の障害者福祉の歴史は、人間の尊厳と平等の理念を追求する壮大な物語です。この歩みは決して平坦ではありませんでしたが、多くの人々の情熱と努力によって、今日の共生社会の礎が築かれてきました。
障害者福祉の概念は時代とともに大きく変化し、「保護の対象」から「権利の主体」へという根本的な転換を遂げています。この変化こそが、現代福祉制度の核心を成しているのです。
⚖️ 戦前の障害者処遇
明治時代(1868-1912)
近代国家建設の中で、救貧制度が整備開始。しかし、障害者は主に慈善事業の対象として位置づけられていました。
大正時代(1912-1926)
社会事業の概念が登場し、民間団体による福祉活動が活発化。特に視覚障害者や聴覚障害者の教育機関設立が進展しました。
🌅 戦後復興と福祉制度の基盤構築
終戦後の日本は、新憲法の理念の下で福祉制度の根本的再構築に着手しました。1947年の日本国憲法第25条に明記された生存権は、障害者福祉発展の原動力となったのです。
1949年の身体障害者福祉法制定は画期的でした。この法律により、障害者への支援が国の責務として明確に位置づけられ、福祉国家日本の新たな出発点となりました。
1960年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)、1970年の心身障害者対策基本法と続く法整備により、障害種別を越えた包括的支援体制が構築されていきました。
🏗️ 現代の法制度体系
21世紀に入り、障害者福祉は「措置」から「契約」への大転換を迎えました。2003年の支援費制度導入、そして2006年の障害者自立支援法制定は、利用者の自己決定権を重視する現代的福祉制度の確立を意味しています。
2011年の障害者基本法改正では、「社会モデル」の考え方が法律に初めて明記されました。これにより、障害は個人の問題ではなく、社会の環境や制度の問題として捉えられるようになったのです。
🌍 国際的潮流と日本の対応
2006年の国連障害者権利条約採択は、世界の障害者福祉に革命的変化をもたらしました。日本も2014年にこの条約を批准し、「合理的配慮」の提供が法的義務となりました。
2016年の障害者差別解消法施行により、真の共生社会実現への扉が開かれました。この法律は単なる制度ではなく、社会全体の意識変革を促す強力な推進力となっています。
📋 実例から見る制度の変化
事例:Aさん(重度身体障害者)のケース
1980年代:施設入所措置により、限られた選択肢の中での生活
2000年代:支援費制度により、居宅サービスを選択し地域生活を開始
現在:障害者総合支援法の下で、重度訪問介護を利用し、大学進学・就職を実現
この事例は、制度変化が個人の人生に与えた劇的な影響を如実に示しています。法制度の進歩が、一人ひとりの可能性を大きく広げているのです。
📚 参考文献・論文・資料
- 厚生労働省(2023)「障害者白書 令和5年版」内閣府
- 田中耕一郎(2022)「日本の障害者福祉制度の歴史的展開と課題」社会福祉研究 Vol.145
- 佐藤久夫・小澤温(2021)「障害者福祉の世界(第6版)」有斐閣
- 国連障害者権利委員会(2022)「日本の第1回政府報告に関する総括所見」
- 社会保障審議会障害者部会(2023)「障害者総合支援法等の見直しに関する報告書」厚生労働省
- 竹端寛(2022)「『合理的配慮』の実践における課題と展望」障害学研究 Vol.18
- 全国社会福祉協議会(2023)「障害者福祉施設・事業所実態調査報告書」


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