福祉現場のリアル ― 社会福祉士が直面する5つのジレンマ

社会福祉士は、支援の最前線で人々の生活を支える専門職です。しかし、その現場には、教科書では学べない数々の「ジレンマ」が存在します。この記事では、現役の福祉士が直面するリアルな課題を共有し、私たちがどのように向き合っているのかを紐解いていきます。

1. 自立支援と依存のはざまで

支援者としての使命は「自立を促すこと」ですが、現場では自立を急がせすぎると本人の不安を強めてしまうことがあります。逆に、支援を長引かせすぎると依存が生まれます。このバランスをとる判断は、常に個別の状況と向き合いながら行われます。

制度が想定する「対象者像」と、実際に困っている人たちの姿には大きな差があります。たとえば、生活保護の基準にわずかに届かない高齢者は、支援から漏れてしまうこともあります。制度の隙間を埋めるのが福祉士の腕の見せ所であり、創造的な支援が求められます。

医療・教育・行政などとの連携は不可欠ですが、立場や目的の違いからスムーズにいかないことも。時に「誰が主導権を握るか」で衝突することもあります。調整力と謙虚な対話力が問われる場面です。

毎日のように「人の苦しみ」に触れ続ける仕事だからこそ、心の消耗は避けられません。共感力が高い人ほど、自分を責めやすくなります。スーパービジョンやピアサポート、セルフケアの習慣が欠かせません。

「この人のために何とかしたい」という思いが強すぎると、時に中立性が揺らぎます。逆に、距離を保ちすぎると冷たい支援になる。信念と職業倫理のあいだで揺れる場面に、私たちは日々直面しています。

矛盾や限界に向き合いながらも、社会福祉士が現場に立ち続けるのは、「その人の人生を、少しでも前に進める力になりたい」という信念があるからです。完璧な支援はない。それでも、人と社会をつなぐ架け橋としての役割を果たしたいと、多くの福祉士が日々奮闘しています。

「社会福祉士って、なんのためにいるの？ ― “支援者”の知られざる使命」

一般の人には見えにくい、社会福祉士の仕事の本質。次回はその“見えない価値”にスポットを当てます。