児童虐待防止法
すべての子どもたちの笑顔を守るために
📖 目次
児童虐待防止法とは
児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)は、2000年11月20日に施行された、子どもたちを虐待から守るための重要な法律です。この法律は、児童虐待が子どもの人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えることを明確に規定しています。
国際的には、1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択され、日本は1994年に批准しました。この国際的な児童福祉への関心の高まりと、国内での児童虐待の増加という社会問題化を背景に、児童虐待防止法が制定されました。法律の目的は、児童に対する虐待の禁止、虐待の予防及び早期発見、そして虐待を受けた児童の保護及び自立支援のための措置を定めることです。
深刻化する児童虐待の現状
児童相談所における児童虐待相談対応件数は、年々増加の一途をたどっています。令和4年度(2022年度)の速報値では約21万9,170件に達し、5年前と比較して約25%も増加しています。令和5年度(2023年度)には過去最多を更新し、この深刻な増加傾向は社会全体の課題となっています。
令和4年度 児童虐待相談対応件数
過去最多を更新し続けています
虐待の種類別割合(令和4年度)
特に注目すべきは、心理的虐待が62.7%と最も多くを占めていることです。これには、保護者間のDV(ドメスティックバイオレンス)を子どもが目撃することで心理的外傷を受けるケースが含まれます。また、虐待通告の経路別では警察からの通告が56.5%と最も多く、警察と児童相談所の連携が重要な役割を果たしています。
4つの虐待タイプ
児童虐待防止法第2条では、児童虐待を4つのタイプに分類しています。これらはいずれも子どもの人権を侵害し、心身に深刻な影響を与えるものです。重要なのは、虐待としつけは明確に異なるという点です。しつけとは「子どもの人格や才能を伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにサポートする行為」であり、親の言うことを聞く従順な子にすることではありません。
🤕 身体的虐待
殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、壁や床に叩きつけるなど、児童の身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行を加えること。
😢 性的虐待
児童にわいせつな行為をすること、または児童をしてわいせつな行為をさせること。性的暴行や性的搾取が含まれます。
💔 心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に暴力をふるう(DV)など、児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
🍽️ ネグレクト
食事を与えない、ひどく不潔にする、極端に衣類が不適切、病気やけがをしても病院に連れて行かない、家に閉じ込める、車内に放置するなど、保護の怠慢・拒否。
これらの虐待は、しばしば複合的に発生します。また、虐待を受けた子どもには、自尊心の低下、うつ状態、無感動、無反応、攻撃性などの精神症状が現れることがあり、長期的なトラウマとして残ることも少なくありません。
法改正の歴史と最新動向
児童虐待防止法は、社会の実情に合わせて過去4回以上の重要な改正が行われてきました。増え続ける虐待に対応し、子どもの権利をより確実に守るための法整備が進められています。
児童虐待防止法が施行。虐待の定義、通告義務、早期発見の責務などを明文化。
親権者による体罰の禁止を明文化。児童虐待防止法14条で、しつけを名目とした体罰を法的に禁止。民法822条の懲戒権規定が虐待を正当化する口実として使われている問題も議論。
児童福祉法改正により、子どもからの意見聴取の仕組み整備、社会的養護経験者への支援上の年齢要件の弾力化が決定。
こども家庭センターの設置、こども家庭ソーシャルワーカー(認定資格)の運用開始。体罰禁止を含む改正民法821条が施行され、「子の人格を尊重し、体罰その他の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」と明記。
実例から学ぶ教訓
児童虐待による悲劇的な事件は後を絶ちません。これらの事例を検証することで、予防と早期発見の重要性を再認識し、同様の悲劇を繰り返さないための教訓を得ることができます。
【事例1】茨城県産後うつ病による虐待死事件(2016年)
産後に実母のうつ病が重症化し、思考能力の低下と心身衰弱の状態で生後2ヶ月の子どもに身体的虐待を行った事件。子どもが泣き止まないことに腹を立てて首を絞め、心肺停止状態に。実母は自ら通報したが、約1ヶ月後に子どもは死亡。
教訓:検証では「周りが気付ければ救えたかもしれない命」と指摘。産後の母親の心身状態への注意と、地域や医療機関の継続的なサポートの重要性が浮き彫りに。
【事例2】保育所が虐待を発見したケース
保育所が本児の体に痣を発見し児童相談所に相談。児童相談所は警察に相談したが、緊急性はないと判断された。その後、実母の交際相手による日常的な暴行がエスカレートし、致死事件に発展。
教訓:虐待の兆候を発見した時点での迅速な対応と、関係機関の緊密な連携の必要性。「緊急性がない」という判断が致命的な結果を招くことも。
- 健康診査を受診していても、その時点では問題が表面化せず、虐待リスクを把握できないケースが17.6%
- 不衛生な家庭環境や保護者の精神的問題があっても、直接的な虐待行為が見られないため対応が遅れるケース
- 関係機関間の情報共有と連携不足による対応の遅れ
- 児童相談所の体制整備の必要性(交付税基準を下回る配置が55%の自治体で発生)
私たちにできること – 通告義務と早期発見
児童虐待防止法第6条では、すべての国民に通告義務が課せられています。虐待を発見した場合、または虐待の疑いがある場合は、速やかに市町村、福祉事務所、または児童相談所に通告しなければなりません。重要なのは「虐待を受けた児童」だけでなく「虐待を受けたと思われる児童」も通告対象という点です。


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