人生の最初の2年間は、心の発達において最も重要な時期です。基本的信頼感の形成が、この時期の中心的な発達課題となります。

愛着理論によると、養育者との安定した関係が、将来の人間関係の基盤となります。「世界は安全で、人は信頼できる」という感覚が、この時期に築かれるのです。また、認知発達の面では、ピアジェの感覚運動期に該当し、五感を通じて世界を理解していきます。

幼児期は自律性の発達と想像力の開花が特徴的です。エリクソンの発達理論では、「自律性対恥辱・疑惑」そして「積極性対罪悪感」の段階に相当します。

この時期の子どもは、象徴機能を獲得し、言語や遊びを通じて内面世界を表現します。「なぜ？」「どうして？」の質問攻撃は、知的好奇心の表れであり、論理的思考の萌芽を示しています。また、道徳性の基礎も形成され、善悪の概念を学び始めます。

学童期は「勤勉性対劣等感」の発達段階です。学校という新しい環境で、学習への意欲と社会的スキルを身につけていきます。

ピアジェの具体的操作期に該当し、論理的思考が発達します。仲間との協力や競争を通じて、社会性や共感性が育まれ、自己概念がより明確になります。この時期の成功体験は、自己効力感の基盤となり、将来の挑戦への意欲を支えます。

青年期はアイデンティティの確立が最大の課題です。第二次性徴による身体的変化と、抽象的思考の発達が相まって、内面の混乱と成長が並存します。

アイデンティティ・クライシスを経験しながら、「自分らしさ」を見つけ出していく過程は、まさに人生の転換点です。仲間関係の重要性が高まり、親密性への準備が始まります。この時期の混乱は成長の証であり、将来の安定したアイデンティティの基礎となります。

成人初期は親密性の確立とキャリア形成が中心となります。恋愛、結婚、友情など、深い人間関係を築く能力が試されます。

親密性対孤立の発達課題に取り組みながら、生涯のパートナーシップや職業的アイデンティティを確立していきます。この時期の選択が、中年期以降の人生の質を大きく左右するため、心理的安定性と適応力が重要になります。

中年期は生成性の発揮が核となります。子育て、仕事での指導、社会貢献など、次世代への投資に意味を見出します。

中年期危機を経験する人も多く、人生の意味や価値を再考する時期でもあります。「自分は何を残せるか？」という問いに向き合いながら、知恵と成熟を獲得していきます。身体的変化への適応と共に、精神的な深まりを体験します。

老年期は統合性の獲得が最終的な発達課題です。人生を振り返り、受容と統合を通じて、智恵を獲得します。

完全性対絶望の段階で、「この人生で良かった」という感覚を得られるかが重要です。世代継承性の意識を持ちながら、若い世代への知恵の継承と、死への準備という二重の課題に取り組みます。