雇用保険法とは

雇用保険法は、1974年（昭和49年）に制定された、日本の労働者を守る重要な社会保険制度です。失業した際の生活保障はもちろん、職業訓練の支援、育児・介護休業中の給付など、働く人々の人生のあらゆる局面をサポートする包括的な制度として機能しています。

この法律は、労働者が失業した場合に必要な給付を行い、再就職を促進することで、労働者の生活の安定と雇用の促進を図ることを目的としています。単なる失業給付だけでなく、雇用の安定や能力開発を通じて、社会全体の労働市場を活性化させる役割を担っています。

制度の目的と意義

雇用保険法は三つの大きな柱で構成されています。第一に、失業者の生活の安定を図ること。突然の失業により収入が途絶えた労働者に対して、基本手当（失業保険）を支給することで、当面の生活を支えます。

第二に、求職活動の支援です。単にお金を給付するだけでなく、職業訓練の機会を提供し、就職活動に必要なスキルアップを支援します。これにより、より良い条件での再就職を実現できるのです。

第三に、雇用機会の増大と雇用の安定です。事業主に対する各種助成金を通じて、新たな雇用の創出や、既存従業員の雇用維持を促進しています。これらの取り組みにより、日本の雇用環境全体の改善に貢献しているのです。

適用範囲と加入条件

雇用保険は、原則として週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがあるすべての労働者が対象となります。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも、これらの条件を満たせば加入対象です。

事業主は、対象となる労働者を雇用した場合、必ず雇用保険に加入させる義務があります。保険料は労働者と事業主が分担して負担し、2024年度の保険料率は、一般の事業で労働者負担が0.6%、事業主負担が0.95%となっています。

適用除外となる主なケース

• 週の所定労働時間が20時間未満の者
• 31日未満の短期雇用が見込まれる者
• 学生（定時制・通信制を除く）
• 65歳以上で新たに雇用された者（高年齢被保険者として別扱い）

主な給付内容

雇用保険の給付は大きく分けて四つのカテゴリーがあります。最も知られているのが「求職者給付」で、いわゆる失業保険がこれに当たります。基本手当は、離職前の賃金の50〜80%が支給され、年齢や勤続年数により90日から最大330日間給付を受けることができます。

「就職促進給付」は、早期の再就職を促すための制度で、再就職手当や就業促進定着手当などがあります。基本手当の支給残日数が3分の1以上ある状態で安定した職業に就いた場合、残りの日数に応じた一時金が支給されます。

「教育訓練給付」は、自己啓発を支援する制度で、指定された教育訓練講座を受講した場合、受講費用の一部が支給されます。一般教育訓練では20%（上限10万円）、専門実践教育訓練では最大70%（年間56万円、3年で168万円が上限）が支給されます。

さらに「雇用継続給付」として、育児休業給付金や介護休業給付金があり、仕事と家庭の両立を支援しています。育児休業給付金は、休業開始から180日目までは休業前賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。

統計データで見る雇用保険

2020年のコロナ禍により受給者数が急増しましたが、その後は経済回復とともに減少傾向にあります。これは、雇用保険制度が経済状況に応じて適切に機能していることを示しています。

実例紹介：雇用保険制度の活用事例

Aさん（32歳・女性）は、IT企業で5年間勤務した後、会社の事業縮小により離職しました。雇用保険の基本手当を受給しながら、教育訓練給付制度を利用してプログラミングスキルを向上させ、3ヶ月後により条件の良い企業への再就職に成功しました。さらに再就職手当も受給し、新生活のスタートを切ることができました。

Bさん（28歳・男性）は、第一子の誕生に伴い1年間の育児休業を取得しました。育児休業給付金により、休業前賃金の67%（最初の6ヶ月）、その後50%の給付を受け、経済的な不安なく育児に専念できました。これにより、夫婦で協力して子育てを行い、復職後も仕事と家庭の両立を実現しています。