⚕️ 戦傷病者特別援護法
戦場の労苦に報いる、国家補償の精神
📋 目次
🎖️ 戦傷病者特別援護法とは
戦傷病者特別援護法は、昭和38年(1963年)8月3日に制定された、日本の重要な社会保障法です。この法律は、軍人・軍属等であった方々が公務上の傷病にかかり、現在も一定程度以上の障害を有する場合や療養が必要な場合に、国家補償の精神に基づいて援護を行うことを目的としています。
💡 法律の核心
戦傷病者特別援護法は、戦場で負傷・発病した方々とそのご家族が体験した戦中・戦後の労苦に対し、国が責任を持って支援する制度です。単なる福祉制度ではなく、国家補償の精神に基づいた法的権利として位置づけられています。
📜 法律の制定背景と歴史
戦後、多くの戦傷病者が社会復帰に苦しむ中、恩給法や戦傷病者戦没者遺族等援護法だけでは十分な支援が行き届かない状況がありました。特に、軍属や準軍属として従事した方々の中には、既存の制度の対象外となるケースも多く存在しました。
このような状況を改善するため、昭和38年に戦傷病者特別援護法が制定されました。この法律により、戦傷病者手帳の交付を受けた方々は、継続的な医療支援や生活支援を受けることができるようになったのです。平成18年(2006年)には、戦傷病者とその家族の労苦を後世に伝える施設として「しょうけい館(戦傷病者史料館)」が開館しました。
🏥 7つの援護内容
戦傷病者特別援護法では、以下の7つの援護が定められています。
🔬 療養の給付
戦傷病者が公務上の傷病、またはこれと因果関係のある傷病について、都道府県知事が指定する医療機関において、国費により診察、薬剤、手術などの治療を受けることができます。事前に療養券の交付を受ける必要があります。
💰 療養手当の支給
療養の給付を受けている1年以上の長期入院患者で、傷病恩給等の年金を受けていない方に対して支給されます。これにより、長期療養中の生活の安定が図られます。
🦾 補装具の支給・修理
一定程度以上の障害を有する戦傷病者に対し、義手、義足、車椅子などの補装具を支給・修理します。これらは戦傷病者の日常生活の質を向上させるために不可欠なものです。
🏛️ しょうけい館の役割
平成18年(2006年)3月に開館した「しょうけい館(戦傷病者史料館)」は、東京都千代田区九段下に位置する国立施設です。戦傷病者とそのご家族が体験した戦中・戦後の労苦を、実物資料、証言映像、図書文献などを通じて後世代に伝える役割を担っています。
館内では、野戦病院のジオラマや、戦傷病者が実際に使用していた装具など、貴重な展示が数多くあります。入館は無料で、東京メトロ九段下駅から徒歩わずか3分という好立地にあり、多くの方々が戦争の実態と平和の尊さを学ぶ場となっています。訪問者の多くは、展示の密度の高さと、戦傷病者とその家族の労苦の深さに圧倒されると語っています。
🌟 未来への継承
戦後80年が経過し、戦傷病者の平均年齢は極めて高齢となりました。かつて戦傷病者の中心的存在であった日本傷痍軍人会は平成25年(2013年)11月30日に解散しましたが、戦傷病者特別援護法は今なお、わずかながら残る戦傷病者の方々とそのご家族を支え続けています。
✨ 記憶の継承
戦争を直接経験した世代が少なくなる中、しょうけい館のような施設の役割はますます重要になっています。実物資料や証言映像は、単なる歴史の記録ではなく、生きた教材として、戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に伝え続けるのです。
戦傷病者特別援護法は、国家補償の精神に基づき、今後も継続的な支援を提供していきます。同時に、この法律が存在する意義そのものが、戦争の記憶を風化させず、平和な社会を守り続けるための重要なメッセージとなっているのです。
📚 参考文献・資料
- 厚生労働省「戦傷病者及び戦没者遺族への援護」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/senbotsusha/seido03/
- しょうけい館(戦傷病者史料館)公式サイト https://www.shokeikan.go.jp/
- 国立公文書館「しょうけい館(戦傷病者史料館)について」アーカイブズ第65号
- 各都道府県社会福祉課「戦傷病者特別援護法による援護」
- e-Gov法令検索「戦傷病者特別援護法」(昭和38年法律第168号)


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